軽く野放し

フジテレビの社長だった、港氏の座右の銘だそうで。
彼は、自分と同世代で、価値観を共有してきた。
だから、なんとなくわかるし、それだから、世の中こんなふうになってしまった。
してしまった。

軽く野放しにしたからで。
そのどこが悪いのか。

まじめに、真剣に世直しをしようとした連中が過激になり、その結果、世の中はささくれ、荒廃してしまった。

だからクラブ活動だって公式の部が廃れて、同好会が盛んになった。
根性なんて、馬鹿らしい。
「楽しめればいいのよ。楽しければ。」

物事も難しく考え、取り組んだって、意味ないよ。
何も変わらない。

だから、何事にも白けて、醒めた目で斜に構え。
俺一人、何ができるのかと。
日和見、事なかれ。

厭な事は自分でやらないで。
責任を持つのは嫌だ。
辛い事は人にやらせ。なるべく避ける。
都合が悪い事は見てみぬふりをして。
何だって世の中が悪いとして、自分は何の努力もしない。

面白おかしくね。楽しくなければ。
楽しければいいんだよ。

臭い物には蓋をして。
面倒くさい事は自分は逃げて他に任せ。
表面は取り繕って、裏で舌を出す。

漁夫の利さ。

要領よく、器用に生きれば、時間が経てば。

そして、歳を重ねたさ。
時間が経って、振り返ってみたら、自分の人生、スカスカ、何もない空疎な残渣しか。
糞だな。

軽い。軽いんだよ。
何事も軽いのである。
重く受け止める事はいやがられる。
重く受け止めれない。

死活問題のような事でも軽く流される。
結婚も簡単軽く考えられる。
就職だって適当に。
進学だって親の言う通り。
深刻に考えない。
KYとかいって、まじめな話をしようとしても、「空気読めよ」と押しとどめる。
「人を好きになるって」

「そんな事、どうでもいい。」
「うざい」
「面倒くさい。」
「あっちへ行ってよ。」
「鬱陶しい」
「聞きたくない」
「どうでもいい」
「関係ない」
「しつこいよ」

野放し。

指示命令ができない。
というより、悪い事と思い込んでいる。
起立と大きな声を出すのも憚れる。

「指示するなんて、恥ずかしくてできないよ。」

小さな声で、「皆さんできましたら席を立ってください。お願いします。」と。
「声が小さい」といわれたら。
ますます声が小さくなり。
終いには、泣き出してしまう。

我々は、指示は、短く、簡潔明瞭に。
大きな声で。
「起立」「集合」「着席」「解散」

注意できない。
指示できないくらいだから、注意なんてとんでもない。

注意しなければと気がついても。
誰か注意しないかなと心の中で呟いて。
注意する人が現れても、厄介な事に巻き込まれたくないから、陰に隠れる。

𠮟れない。
注意できないくらいだから、しかるなんてとんでもない。
見知らぬ人どころか、自分の子だって、部下だって、友達だって、𠮟れない。

罰せられない。人を罰するなんてとんでもない。
叱る事ができなければ罰するなんてとんでもない。
罰するなんて口に出すだけで極悪非道。

指導できない。指示もできず、注意もできず、叱る事も、罰する事もできなければ指導なんて無理に決まっている。
その結果、指導できるものがいなくなり。
指導できるものがいなければ、無法状態になるのは必然。

でも、自分が指導しなければならないの。
そんな責任持てないよ。
世も中、世間が悪いので。
だって誰も注意も、叱っても、教えてもくれなかったよ。

世の中全て他人事。
誰も責任をとらない。とれない。

それがフジテレビ状態。
何が悪いの。誰が悪いの。
俺が悪いの?
俺のどこが悪いの。

一見、物分かりがよく、なんでも任せててくれる。
温厚で、人のいやがる事は言わない。しない。
自分ではね。表ではね。一見ね。

でも、丸投げ、無責任。
そして、裏ではね。

野放し。
俺、関係ない。あなた任せ。
何も決められない。

規律も、秩序も、礼儀作法なくなって。
傍若無人に子供が泣き叫んでも、注意できる親もなく。
どうして躾けたらいいかわからないから、虐待になる。
当たり前に統制が取れなくなる。

当たり障りなく、皆の目を気にして、顔色を窺い、おどおどといい人でいたい。
嫌われたくない。ただそれだけで。

注意するなんて損な役割は、極力、避けて、逃げて。

だから軽く野放し。
軽く野放した結果が、フジテレビ。
でも、当事者は分からないし。わかろうともしないし。
今さらわかったところで、どうなるものでもなく。
だったら、潔く、何もかも投げ出して、やめればいい。
それしか解決が浮かばない。
自分が辞めた後、どうなろうと知った事じゃない。
「わかりましたよ、やめればいいんでしょ。」
後は、野となれ山となれ。
「でもね、自分は、何も悪くないんですよ…。」と呟いて。

残されたのは、誰も責任をもって、後始末もできない。
収拾のつかない混乱、そして。滅亡。

いっておくが、革命家にとって無秩序で、統制の取れない、無政府な状態が革命的状況で、その革命的状態を作り出す為にテロもする。
それが、彼らの大義で、そのために、大衆が、物事を深刻に受け止めないように仕向ける。

「若いうちに、気力体力があるうちに、根気が続くうちに、鍛えておけよ。」
「年をとたら根気がなくなるよ。」
「若いうちは苦労を買ってでもしろ。」
「かわいい子には旅をさせろ。」
「忠言は耳に痛い。」
「うっせ、うっせ、うっせなじゅあないよ。礼儀を知れ。」