過去が、突然、ヌ~と顔をのぞかせる事がある。
それも生々しく記憶を呼覚ます。
一瞬、頭が白くなって。
それから、ゆっくりと、記憶の糸を辿りながら、過去へと引き戻す。
忘れていたはずなのに、忘却したはずなのに。
突然、鮮やかに過去が蘇るのだ。
情景が浮かび上がり、過去へと引き戻していく。

かすかな潮の香り。
燃えたつような草の匂い。

人のざわめき。
耳元で囁(ささや)く懐かしい声。

記憶は、時間を逆転させる。
時が止まり。
今と過去が混ざりあい。
混沌とした世界に導いていく。

多くは、心の疼きを伴いながら、昔の出来事を思い出させる。
思いあがるなよ。忘れるなよと言いたげに…。

お前は、どこにいるのか。
お前は何者なのかを思い知らせていく。

ドッキリとさせていながら、また、深い闇の中に消えていく。
後に残るのは、かすかな気配と現実の世界。

お前は、今どこにいて、何を考えているんだ。
会いたいな。でも会うのも怖い。

俺とお前の仲じゃないか。
わかっているだろ。
わかっているさ。
お前は今でも生きている。

行きたいさ。でも行きたくもない。