如何に、経済を制御すべきか。

経済とは、生きる為の活動である。生きていくために必要な資源を生産し、調達し、人々に遍く分配する事である。

市場経済では、経済活動は、「お金」の出入り、即ち、収支を基礎としている。まずこの事を覚えていてほしい。 また、収支と損益は違う。収支は一致していなければならないが、損益は、一致しないから成り立っている。なぜならば、収支は対照勘定であるのに対して、利益や損失は、差額勘定だからである。この事は大前提である。

中国の人口は、2000年前、前漢の頃おおよそ7000万から8000万人くらいだったと想定される。1億人を越えるのが18世紀と言われ、それから爆発的に人口を増やし、200年足らずで14億人(2019年現在)まで増加したと言われる。 長い期間、人口が増加しなかった理由は、戦乱や飢饉、疫病などがあげられるが、根本的な原因は、食料にあるとみられる。 これは、経済の本質を意味している。日本は、終戦後、豊かさを享受してきた。敗戦直後を除いて80年以上日本人は、飢えとは無縁であり、欲しいものは、何でも手に入ると錯覚している。 しかし、私の曾祖母は、飢饉の経験があったと聞く。また、戦前には、娘を売らなければならないほど生活が困窮したとも聞く。かつて「おしん」という朝ドラが一世を風靡したが、将に、生活の糧を得る事そのものが経済であった。 経済の本質は生きる事であり。その為に、戦争さえ厭わなかった。経済というのは、根本的に暴力的なのである。 侵略戦争だって、植民地だって贅沢をするというより、死ぬか生きるか、死活問題であり、切羽詰まった理由があったのである。それが、戦争すら正当化してきたのである。 言い換えれば平和を維持したければ、経済利問題を解決するしかないのである。

経済の問題が政治とか、社会問題、道徳の問題、哲学や思想の問題よりも生々しく感じるのは、それは、人の生き死にに直結し、性欲、食欲、物欲、名誉欲といった人間本然の欲望に根ざしているからである。

経済の問題は、人々が生きる為に必要な資源をいかに、生産し、調達するか。それを国民すべてに遍く、隅々まで行渡らせるかの問題なのである。時として、手段を選ばなくなる。何故なら、生きる事に不可欠な事を指すからである。

この事からわかるのは、一国の経済で最も求められる事は、必要な資源を調達する事、生きるために必要な資源。特に、食料とエネルギーを調達する事である。 故に、総生産に占める輸入量が大切なのである。食料とエネルギーの依存度が要点を握っている。 だからこそ、時として、戦争や外交が経済的手段として用いられるのである。 国王、独裁者、政治家の野心だけで戦争が起こるわけではない。戦争の背景には、必ず経済的な原因が隠されている。だからこそ、国民の支持を得る事が出来るのである。

本当に平和を実現したければ、先ず、経済の問題を片付ける事である。 経済の第一の意義は、国民が生きる為に必要とする資源を生産、調達し、それを遍く必要なだけ、分配する事にある。先ず、国内に不足する資源があったら、それをいかに調達するかが国家の一義である。そして、経済の第一の目的でもある。

国内不足する資源をいかに平和的手段で調達するか。それが経済の第一義の問題である。 平和的手段で調達するとは、交易によることを意味する。 海外交易の第一は何が不足していて、何を輸入するかにある。そして、その為に何が必要なのか。その対極に交易によって必要な資源を海外から調達しようとしたら相手国の通貨が必要となるので、相手国の「お金」を獲得する為に輸出する必要があるのである。待った、決済のためには、支払いを準備する必要がある。 故に、経常収支を黒字に保っていないと支払準備が枯渇してしまう事になる。 支払準備が不足したら、相手国から借金をする事になる。

海外は、対外収入は、輸出収入と配当、借入金である。 対外支出は、輸入と海外投資、借金の返済である。 債務は、負債と外貨準備である。 対外資産と対外債務である。 国の借金の担保は、国富と徴税権である。国富と徴税権は、国家の主権、独立に関わる大事だという点を忘れてはならない。 対外的債務は、結局、武力によって守られている。

基本的に経済は、部門間の資金の流れによって動いている。 国内の部門は、家計、非金融法人企業、一般政府、対家計非営利団体、金融機関、海外部門の六部門が設定されているが、この内、対家計非営利団体の占める割合は、小さく、実質的には、家計、非金融法人企業、一般政府、金融機関、海外部門の五部門を念頭に置けばいい。その内、直接市場に関わるのは、家計と非金融法人企業である。ただ、経済に影響を与えるという意味では、家計と非金融法人企業に一般政府を加えた三つの次元で、最初は考えればいい。 個々の部門は、収入と支出、資産と債務の四つの働きによって構成されている。 重要なのは、経済の動きは、貨幣化されることによって数値化、数式化できるという点である。但し、経済の数学には、いくつかの約束事、制約がある事を忘れてはならない。

経済は、きわめて合理的にできている。合理的でないのは、人間の方である。

何が市場経済を機能不全に陥れるのか。

市場経済が機能不全に陥る原因は、一つは、決済用の現金が不足する事である。そして、第二に、「お金」が市場に流れなくなる事である。

経済を構成する主体は、「お金」の出入りによって機能を発揮する。 故に、入金と出金の働きを操作する事で経済主体は、運転されている。 先ず、「お金」の入金、出金が経済主体にどの様に作用するかを明らかにする必要がある。

経済主体は、現金収支によって機能を発揮する。「お金」が流れなくなったら経済主体は、機能不全に陥る。

「お金」は、分配の手段として決定的な役割を演じている。「お金」がなくなったり、市場に循環しなくなったら市場は、忽ち、機能不全に陥る。

市場経済が機能不全に陥る原因は、一つは、決済用の現金が不足する。第二に、「お金」が市場に流れなくなる事である。

決済用の現金が不足するのは、消費支出が不足するのが原因である。「お金」が市場に流れなくなる原因は、借金の返済資金が用意できない事が原因である。

現金の残高が不足すれば、経済主体は破綻する。 現金の残高をいかに残すかの問題。その為には、現金を増やす事が重要で、現金を増やす手段には、第一に、収入を増やす。第二に、支出を減らす。第三に、現金以外の資産を減らす。第四に、借金をする。第五に、元手・資本を増やす事の五つがある。

逆に、現金残高が不足する原因は、第一に、収入が減る。第二に、支出が増える。第三に、現金以外の資産が増える。第四に、借入金を返す。第五に、元手を減らす。

もう一つ、経済が成り立たなくなる原因が借金の返済が滞る事である。借金の返済が経常的収入を圧迫するとお金が本来の役割が果たせなくなり、最悪の場合、「お金」が循環しなくなるからである。

借入金の増加は、一時的な現金を増やす事である。同時に、固定的な支出である借金の返済を増やす事でもある。

つまり、借金の増加には、相互作用があるという事である。

債務が自己増殖を始めると経済は危機的な状態に陥っていく。 債務はなぜ自己増殖を始めるのか。 自己増殖を抑止する手段あるのか。 あるとしたら、どうすべきなのか。

債務が自己増殖を始めるのは、経常的収入を負債の債務が上回る時である。 こうなると経常的収入によって債務を清算できなくなり、新たな債務を借り換える事によって返済の資金に充てざるを得なくなるからである。

債務が自己増殖するか、否かは、経常的収入と債務の返済の関係による。 家計でいえば、借金の返済が所得を上回り、蓄えを使い切った時、借金は自己増殖をはじめ、日々の生活に必要な収入が得られなくなり、借金の返済が出来なくなる。 企業でいえば、税引き前利益と減価償却費の和を借入金の返済額が上回り、更に、債務超過に陥ると負債は自己増殖を始める。 一般政府は、プライマリーバランスを赤字になった時、債務は自己増殖を始める。 金融機関は、貸出金利収入を預金金の支出が上回った時、債務は自己増殖する。

何が原因で経常的収入を債務の返済が上回る状態になるのか。 それを明らかにすれば、債務が事自己増殖するような状態を解消する事が可能となる。

経常収入を債務の返済が上回る原因は、経常収入の側にあるか、債務の側にあるかのどちらかである。 ここでいう経常収入というのは、生活や生産に必要な支出を除いた収入を意味する。

経常収入の問題は、収入と支出の要因から構成される。

経常収入の側の第一の原因は、経常収入が減少、あるいは失われる事である。

第二の原因は、経常収入が不安定な事である。

第三の原因は、経常収入が不確かな場合である。

第四の原因は、不測の事態によって異常な支出が発生した場合である。

第五に、定常的な支出の増加である。

第六に、支出が不安定な事である。

収入には、波があり、不確かな傾向があるのに対し支出は確実性が高いという傾向がある。

消費主体の支出は、生活に必要な支出を意味する。 生産主体の支出は、生産に必要な支出を意味する。

債務の側の問題は、元本と金利の問題の二つの要因がある。金利は、元本に付随した値だという事に注意しなければならない。 債務の側の問題は、債務の返済と金利の問題に要約される。

第一に、返済力に対して元本が過大だという事である。

第二に、担保不足。資金の調達力(原資)の不足。担保は、手持ち資産と将来の収入。

第三に、返済期間の問題。

第四に、金利の上昇。

第五に、費用と支出が不均衡な問題。減価償却費などの支出を伴わない費用と設備に対する借入金の返済(費用に計上されない支出)が不適合であると、見かけの利益に対して資金繰りが適合しないで、黒字倒産などの原因となる場合がある。

統合的に考えると決済と債務の関係が経済に決定的な働きをしているという事である。

債務と決済の関係で重要な働きをしているのは、時間である。

現金の残高枯渇するにせよ、借金の返済が滞るにせよ、いずれも経常的収入が維持されている事が第一だという点に注目すべきなのである。そして、固定的な支出が経常的収入の範囲内に抑えるという事が重要な点である。

全体の均衡が破れるとストックとフローの均衡を求めて市場は暴走する。

分析を行う上での前提条件

貨幣経済では、経済的価値、即ち、貨幣価値は、数値として表現される。故に、経済分析は、数学的行為だという点である。故に、数学的な前提条件を定義する必要がある。

経済を構成する要素には、定数と変数がある。 経済には、前提となる値がある。一番、典型的なのは、人口である。 外的要因と内部要因がある。

貨幣価値の計算は、基本的に残高主義である。貨幣価値の演算に用いられる数は、自然数で、小数や負(-)を含まない。故に、基本的に余り算、繰り上げ算になる。余りや繰り上げ、端数をどう扱うかが重要となる。

お金は負(-)の空間を作る。

「お金」は負の空間を作るが、演算は、基本的に経済は、負の値はない。残高が基本だからである。 故に、資産が負になる事は、負債に転化したことを意味する。負債が負の値になる事は、資産に転化した事を意味する。計算上、資産や負債が負の値をとる事はない。あるとしたら、経済活動が破綻したことを意味する。

これは、生産、分配、消費の過程に基づいている。

分配は、二段階で行われる。 第一段階で所得、支払い準備としてのお金が働きに応じて配分される。 第二段階で、市場から必要な資源を購入する事で分配は完結する。

所得の在り方が第二段階の物価を制約する。 所得の在り方は、総所得と単位所得の平均、分散、そして、分布によって集約される。

経済主体には外部取引と内部取引があり、各々均衡している。外部取引と内部取引の働きに応じて経済の仕組みは動かされている。外部取引は収支の元となり、内部取引は、損益の元となる。

経済の目的を実現する場、即ち、生活の場は、家計である。なぜならば、生活は、消費によって実現するからである。要するに、経済は、消費を目的として形成される。生きる為に必要な資源を消費する事が生活である。 故に、先ず、家計の収支とその結果生じる債権、債務関係を明らかとする。 家計は、第一段階で、何らかの形で収入を得る必要がある。手に入れた収入の範囲で財を購入する事で生活をする。国家社会の使命は、生きていく為に必要な財を購入するのに必要な「お金」を調達できるようにする事である。肝心なのは、必要な財と必要な「お金」である。

家計の収入は、所得と贈与(給付金、贈与、財産相続等)、借金からなる。 家計の収支構造は、所得が柱になる。 家計では、所得の発生は資産の増加か借金の増加を意味する。資産の減少は、他の資産の増加か、負債の増加を意味する。

企業支出は資産と費用の和であるが、家計では、資産+消費の和である。 支出は、資産の減少か負債の増加。支出によって得た物は消費か投資に向けられる。投資は、消費設備に対する投資、最も大きいのが建設投資である。

家計の支出は、費用ではなく消費の発生を意味する。費用というのは、生産手段の一つである。つまり、費用は、生産的支出を意味する。それに対して、家計の支出は、消費を目的とした支出、消費支出である。所得から消費的支出を差し引いたものが、預金に回される。不足した場合は、資産を換金するか、借金をして補う事になる。

家計の役割は、生活を成り立たせることにある。家計を成り立たらているのは、家内労働である。家内労働は、非賃金労働であり、何らかの対価を得る事を目的としたものではない。自家消費を目的としている。しかし、だからと言って経済的に無価値か、何の価値も生み出していないのかというとそうではない。むしろ生産労働と同等、それ以上の価値を生み出している。

非金融法人企業の働きは、生産にある。生産とは、付加価値の創造である。もう一つ重要な役割が生産過程を通じて「お金」を分配する事である。 所得の分配は、組織的に行われる。その他の費用は、市場取引を通じておかなわれる。

企業の収入は、現金売上とその期の借入金と期中の増資の和である。 収支と損益とは違う。収支と損益は、計算する目的も基準も違う。 この点を錯覚すると経済の動きは複雑になり、見えてこない。

収益には、現金収入のない収益もある。収益に計上されない収入もある。費用には、支出の伴わない費用がある。費用に計上されない支出もある。この点の見極めが肝心なのである。

収益を得ることは、資産の増加か、負債の減少を意味する。 費用の増加は、資産の減少、負債の増加を意味する。 資産の増加は、他の資産の減少、負債、資本のいずれかに増加、収益の発生を意味する。負債の減少は、他の負債の増加、資産の減少、費用の発生を意味する。 資産、負債、資本、収益、費用が織りなす関係が経済主体を動かし、経済を動かしていく。

損益取引と貸借・資本取引とは明確に区分されている。

非金融法人企業の働きは、生産手段に投資して、原材料を仕入、財を生産して、販売し、その過程で費用として「お金」を分配する事である。 財の買い手は、主として家計である。家計と政府は、最終消費先であり、他の法人企業は、中間消費の対象となる。

経済の動きを予測する為には、長期借入金、短期借入金の資金需給、地価の推移、株価の推移の相関関係を明らかにし。できれば、重回帰分析をしたい。 経済成長に対する非金融法人企業の影響を予測する為に、売上、総生産、付加価値、所得の相関関係を明らかにする。その上で、できれば重回帰分析をする。 業種毎、産業毎に構造の違いがあり。その業種、産業別の違いに応じた施策をとる必要がある。

国家の収入は、歳入であり、支出は、歳出である。財政は、現金主義であるから、歳入は、そのまま国家収入であり、歳出は、国家支出である。 歳出の構成は、所得の再分配、公共投資、その他の公共経費から構成される。地方交付税・交付金は、所得の再配分に含む。その他の公共経費では、防衛。教育科学振興が大きな割合を占めている。 給付金と言った所得の再配分の為の財源は、本来、その性格や働きからして税金でなければならない。なぜならば、公共経費は、付加価値を生まないからである。同様の理由から年金は、積立金が原則である。

税の出し手は、他の部門であるが、基本的に家計である。

実際には、日銀の当座預金に預けられている部分は、市中に供給されていない。

金融機関の働きには、預金業務、貸出業務、為替業務、証券投資業務と窓口業務がある。 金融機関の収入は、第一に、預り金(金融機関かに見ると借入金)第二に、貸付金利、第三、その他事業収入である。 金融機関の損益には、預金収入は、記載されていない。預金は借入金、資金移動である。いくら巨額の預金があろうとそれは、金融機関にとっては、借入金であり、貸付金に回らない限り、金利収入は得られないのである。 金融機関の収益の柱は、貸付金利である。