戦後がやっと終わろうとしているのかもしれない。
今のフジテレビ問題を見ていると、そんな思いにさせられる。
八十年前の事が白日夢のように、蘇ってくる。
まるで、戦後の高度経済も、バブルも幻であるが如く。
我々が正しいと思い、思いこまされてきたこと。
港社長の座右の銘が「軽く野放し」だそうだが。
彼も昭和二十七年生まれ、私は二十八年生まれ。
大学入試の時。
学園紛争が終焉し、三無主義、しらけ世代の狭間に我々の世代がいた。
少し上に、安田闘争で東大入試ができなかった先輩がいた。
日大全共闘。
一つ上の先輩は「三日三晩徹夜してはじめて本音が話せる」と。
一級下の後輩は、「三十分、集中して話ができない」と嘆く。
確かに、生まれた時も荒廃、大学に入った時も荒廃。
価値観が宙ぶらりんで。
結局、「楽しければいいんだ」と。
「面白おかしく生きられればいいんだ」と。
焼け跡の中で、闇市を彷徨い、進駐軍からのお情けで成り上がってきた者たち。
特攻隊員を戦時中は、神と崇めていた者たちが、戦後は掌を返し。
あたかも、愛した人を殺した漢(おとこ)に力づくで手籠めにされ、愛人にされた者の言い訳のように。
「仕方がないじゃあない。」
「生きていかなければならないのだから。」
「死んでしまったらおしまいよ」と。
言い訳をしながら生きてきた。
その挙げ句が…。
東京裁判。
朝鮮戦争。
戦争特需。
ガチャマン。
そして所得倍増。
三等重役。
東京オリンピック。
大阪万博。
高度成長と。
戦後のインテリなんて。
反体制を気取っていれば何とか食える。
サラリーマンなんて気楽な稼業と無責任時代。
清濁併せ呑めとか。
それが…。
六十年代から七十年代に荒れ狂い。
安保闘争。
ノンセクトラジカル、反戦、ベ平連。
学園紛争、アナアキ、叛逆。ピカレスクロマンと。
反権威、反権力、反体制。
公害。高度成長。
フォークゲリラ。
三里塚。
毛沢東語録、文化大革命。
背中の銀杏に聞いてくれと…。
内ゲバ。
あさま山荘事件。連合赤軍。
安田講堂と…。
過激になりすぎて忽然と収束する。
楽しきなければ。
楽しければいいと、軽く三無主義。
赤信号皆で渡れば怖くない。
オイルショック。
ニクソンショック。
気がつけば、テレビは、バラエティーか、グルメか、旅番組。
後はクイズで誤魔化して。
軽く野放し。
KY。空気読めない。
バブルに浮かれ。
オーム。
霊感商法。
かつて、貧乏学生だったフォークシンガーも大御所になって豪邸住まい。
市民運動の活動家が首相になって。
リーマンショック。
そしてジャニーズ問題が発覚する。
2024年には桐島聡が亡霊の如く現れ、「最後は自分の本名で死にたい」と。
日大はあれほどの不祥事を出しながら、学生は静かなもの。
いつの間にか自民党は、統一教会に乗っ取られ。
植木等。
北野武。
志村けん。
誰もが、その時代そのじだい、正しいと信じ。
戦ってきたと。
その価値観がガラガラと音をたてて崩れ。
渦中の人間は、何が悪いのか。
どこで間違ったのかと。
でも結局、その原点は。
焼け跡の闇市から始まったのかもしれない。
フジテレビの会見を見ていると、学園闘争の時がフラシュバックする。
白日夢のごとく。
石破首相が「楽しい日本に」と。
八十年たって、暗闇から復員兵がヌ~と姿を現し、にやりと笑って。
「どうするつもりか」と問いかけている。
「また、やりなおすか」と。
かつての闘志も年老いた。
かつて、自分たちが糾弾した連中と同じようにひな壇に並んでいる。
体制側に立っていながら、いまだに、反体制を叫ぶのか。
日枝さんが「戦わずに逃げるのか」といったというが。
言われた相手は、そっと呟いた。
「誰と戦えというのか。」と。