年をとるとね。
残念ながら保守的になるんだよ。
今更、冒険しなくとも、今のままでいい。
自分はこれまで頑張ってきたんだからさ。
無理することないよ。
これから、新しい事に挑戦すると言ったって。
若い者には、記憶力だって、体力だってかなうわけない。
馬鹿にされて、恥をかくだけ損だよ。
もう若くない。

それに先もないしね。
不確かな未来にかけるより、現状に甘んじた方が得さ。
もういいよ。もういい。
これ以上、欲かくのよそお。
今が良ければいいじゃない。
これ以上がんばっても先は知れてるよ。
これまで頑張ったんだからさ。
もう楽したていいじゃない。
苦労することないよ。

失敗したらこれまでの努力も無駄になるし。
今、問題があるの。
なんか文句あるの。

以前、取引先で退職間際の人とね。打ち合わせた時。
五年先、六年先の話をするとね。
申し訳ないですが、その時、私、この会社にいないので、責任もって答えられませんって。
仕方ないよね。
その時、愛社精神にも、定年があるんだと感じたね。

定年、近くなると責任持ちたくったてもってはしない。
無責任と言われてもね。
若い者は言う事、聞かないしね。
煙たがられるだけ、つまんない。
先のこと考えられもしないし、責任も持てない。
後の者のこと考えろと言われてもね。
どうしようもない。
今、自分の決断に責任が持てない以上、リスクは取れない。
投げやりと言われても。
日和見主義。事なかれ主義に徹した方が嫌な思いをしなくてすむ。
臭い物には蓋をして。

定年までは、無事でいればいい。
定年までは、何事もなく、平穏無事が一番。
問題を起さないでくれ。
厄介な揉め事に巻き込むな。
ここで、責任を取らされたら、退職金がもらえられなくなる。
だから、冒険なんて。
変に正義感に囚われても。
先の事は、俺には関係ない。

それに、年をとるとそれなりに貯えもできて。
失敗した時、失うものも、若い頃に比べて多くなる。
増えはしないけど貯えはある。

だから、年をとると頑固で、ずるくなる。
金にも汚くなる。
執着心も増える。
何せ、年をとると自分一人では生きていけなくなるから。
誰かの介護、世話が必要になる。
だから、地位だの、名誉だの、金だのにしがみつく。
老残だな。無残だな。
そんなに偉いと言わせたいの。
綺麗に年をとりたいね。

日本人は、信仰心が薄い。
まるで電気製品が壊れるように、電気が切れるように終わってしまう。
それが科学的だと。
そう思いたければそう思えばいい。
神なんていないし、報いもない。
人間なんて弱いものさ。
信じなければ、自分を保てないじゃないか。
死後の世界も神の罰も恐れなくなって。
死んだらお終いよ。
そうなったら、刹那主義的になり。
ただでさえ、目先の事しか考えられなくなる。

俺は、常に最善を尽くす。
だから、俺は、神を信じる。
神を必要としているには、人間の方だ。

自分が生きているうちだけいい。
俺の死んだ後の事などどうでもいい。
どうなたって俺には関係ない。
年金だって、国の事だって、自分が生きているうちは大丈夫さ。
口で変革、改革なんて言てもね。
自分から進んで行動なんておこしはしない。
なんだ、かんだ言っては、先延ばしする。

その癖、既得権は、手放す気はない。
自分に地位に固執して。
まだまだ、若い者に負けないと。

およしなさいよ。
もう若くはない。

その上、年をとるとこらえ性がなくなる。
意地も悪くなる。
生きてるうちが花とやりたい放題。

確かに、神は、死後の世界も教えてはくれないし。
信仰の報いも保証はしない。
だから、なんなんだ。
死後の世界があろうとなかろうと。
信仰の保証がなくたって。
信じなければ自分を保てないというなら、信じるしかないではないか。

先がないと諦めたら、人生は終わってしまう。
生きるという事は、生きている事でもある。
未来が失われたら、生きる事さえままならぬ。
老いたからこそ生きる目標が必要なのだ。
先がないから、先を作る。
引き籠ったら、それこそ、自分から棺桶に入るようなもの。

働けなくなったら、なすこともなく、日なが一日、無為に過ごす。
居場所もなく、所在もなく。
それが、十年も、二十年も続く。
耐えられるか。
一日一日、志をもって有意義に生きなければ。
それこそ、先がなくなる。
年をとってからでは手遅れなのだ。

年をとっても活き活きと生きたいなら。
人のために働くことだ。
特に、次の時代を担う若者たちのために。
生き甲斐も、志も、愛国心だって、定年なんてない。
是非善悪に、新旧老若男女の別はない。
ただ一途に己を貫くしかない。
年をとったら、守りに入るのではなく。
前進するしかない。
より攻撃的に、猛々しく。獰猛に。
捨て身になるしかない。
その上で、変革は、若者に委ねよう。
年寄りは覚悟しよう。
次の時代のために。
もうこれでいいと思たら。
退く時だ。
それこそ、人生の定年だ。