変わりたくて変わたんじゃない。
変わらなければ、生きていけないから変わったんだ。
自分は変わりますと決意表明した奴いるけど。
口で言って変われたら苦労はしないよ。
舌の根も乾かない内に、同じ間違いを繰り返している。
自分を変えると言うのは壮絶な事だよ。
生半可な事でできやしない。
人は変われないから苦しんでいるじゃないか。
口でいくら言ったところで、態度や、行動が変わらなければ、何も変わらない。
これからの生き様、行動を見せてもらうよ。
若い奴は、年寄りの苦労話は嫌いだと言うけれど。
俺の知る限り、年寄りは、あまり苦労話をしてくれなかった。
したがらない。
なぜなら、親父たちの苦労は、戦争に直結していたから。
親父たちが、苦労話をしたのは、余程の時だ。
そして、苦労話をする時は、ボソボソと絞り出すようにしていた。
昔の苦労なんて自慢にもならないとね。
苦労話をするのは、何かを伝えたいから。
口で言って変われたら苦労はせんよ。
変わらなければ生きていけないから変わったんだ。
自分の戦友が目の前で戦死し、親子兄弟が焼き殺され、住み慣れた家を焼かれ。
それで、はじめて変われたので。
変わらなかった生き残る事さえできなかった。
自分の意志で変わらなければ、悪い方に変わっていく。
変わってしまう。
何が、一番、苦しのか、辛いのか。
それは、あるがままの自分と向き合う事。
変わるためには、過去の過ち、失敗、自分の悪いところ、醜いところ、自分にできない事、わからない事、つまりは自分の限界を認め、受け入れるkとが出来なければならないから。
自分の醜いところ、過ち、限界を認め、受け入れなければ、変わりようがない。
自分できない事、わからない事の、悪いところを受け止められないから、変わらないんじゃないか。
いい訳なんてしたって無駄だよ。
いい訳なんて誰もきいてくれない。
誰のためにいい訳をするのか。
自分の為だよ。
だからいい訳はするな。
悔しいさ。
自分のできない事、悪いところがあからさまになるんだからね。
悔しさをバネにできなければ、人間は変われないし、成長もできない。
だから、戦争もなくならない。
悔しさを他人に向けるからさ。
できない竜、やらない理由なんていくらでもあげられるさ。
いい訳だってできる。
でもいい訳を止めないと、変われないよ。
監査役は、これまで、お世話になった方にお礼とお別れが言いたいんだと思う。
だから、監査役は、高齢なため今回が最後だと伝えて。
監査役は、口に出しては言わないよ。
それは、自分自身に対するけじめだからね。
監査役は、小学校に上がる前に母親を亡くした。
母親がなくなる前は、母親の実家に預けられていて、それが、父親の実家に引き取られた時、自分が外に遊びに連れ出され。
帰ってきた時、誰もいなかったと。
その時の情景は、九十過ぎた今でも鮮やかに蘇ると今でも監査役は言う。
物心つく頃、父親は家族を連れて満州に生き、自分は、一人取り残され、親戚の家に預けられた。
母親が亡くなってから、ずっと一人。
母を恨んだのも一度や、二度ではないと。
でも、今、あるのも、いろんな人に助けられてきたおかげ。
だから、これまでお世話になった、人達に、お礼がしたくて、そしてお別れがしたい。
その覚悟が解るから、姉も妹も、寄り添わせてくれと。
母の仲の良い友達が、ご主人をなくした後、会社が潰れ。
その方が、工場を解体される音を聞くのがたまらなく辛かったと。
今こうしていられるのも、これまで、お世話になった人達のおかげ。
だから、少しでも、感謝の気持ちを。
それが人生の花道。
親父は、祖父が、何人かの人夫と井戸を掘っている時に、杭が落ちてきて危うく人の首に刺さろうとした時、その杭を自分の手で受け止めた。
それを、親父は、終生自慢にしていた。
俺の親父は、自分の身を犠牲にして他人の命を守ったと。
そう言った誇りが、凛とした生き方をさせてきたんだと思うな。
変わると決意したって、三日も持ちはしない。
変わると言うのは、自分が変わらなければならないように追い込む事が出来なければね。
変わらなくてもいい理由なんてさ、いくらでもあるんだよ。
だから、肝心なのは、変わらなければならないと言う覚悟さ。