俺たちは、なぜって。魂の叫びなんだよ。
なぜ一緒に仕事をしようとしているのか。してきたの。
皆、縁あって、志しあってこの会社に集まったんだよ。
それが若ささ。
その若くて青臭い魂、志が、歳と伴に色褪せ、風化し、醒めてきてしまって。
青臭さ、生臭さを馬鹿にしてしまうようになってしまたのかもしれない。
それが歳をとると言うなら、せめて、若者たちの青臭さを馬鹿にするのはやめようよ。
俺たちは、困難な事に助け合い、結束して立ち向かうために、自分達の夢や志を遂げる為に、運命を共にするために、そして、生きていくために、家族を養うために必要な糧を得る為に、ここに集まっているんだよ。
それを忘れないでほしい。
それを忘れかけているから、おかしな議論になるんだよ。
今は、嵐の前の静けさ。俺たちは、同じ船に乗り合わせた乗組員。
目の前に、氷山が迫っているのに、見て見ぬ振りしたり。
何事もないようにふざけ合うのはやめよう。
「なにをやってんだ。」って、怒鳴られた時、僕は、見張りではないですからなんていう奴は、頭、変だよ。少なくとも仲間ではないな。
目の前に危機が迫っているのに、誰にも警告も報告もしない、そんな人間は、異常なんだよ。
乗組員以前に人としておかしい。
仲間として恥ずかしい。
それを恥ずかしいとも感じなくなったら、もう、人でなしだよ。
ところが、それすらわからない人間が増えて。
いつの間にか、何も感じなくなってしまいつつある。
このままでは、この国は、人でなしの国になってしまう。
それが怖くて。だから…。
なぜって。
俺は、それを言いたいんだよ。
誰も守ろうとしない国は守り切れない。
誰も守ろうとしない会社も守れない。
誰も守ろうとしない家族は守れない。
俺たちは、仲間じゃないか。会社員という前に仲間じゃあないか。
今の会社の多くは、仲間を守ろうとしなくなった。苦しくなると仲間を切り捨てる。
定年になったら、その瞬間から無縁な人間、仲間でなくなる。
それでは、働いてきた社員は、仲間に裏切られたと感じるのかもしれない。
俺は、違う。俺は、決して仲間を見捨てない。
ただ間違わないで欲しい。
社員全てが仲間なのではない。
仲間は、仲間のために働く。
苦しくなったら逃げだす奴。平気で裏切る奴。
仲間が困っているのに助けようともしない奴。
私利私欲でしか動かない奴。裏表のある奴。
自分の事しか考えない奴。功績を独り占めする奴。栄光を分かち合おうとしない奴。
了見の狭い奴。無責任な奴。すぐに人の性にする奴。人を責める奴。
言い訳ばかりする奴。誤魔化す奴、嘘をつく奴。
上っ面ばかり実のない奴。他人を認めようとしない奴。
仲間を見下す奴。横柄、横暴な奴。傲慢な奴。
金の為に仲間を売る奴。信義にもとる奴。約束を違える奴。
道徳より地位や面子を重んじる奴。
既得権にしがみつく奴。利権ばかり追う奴。
志のない奴。礼節のない乙。節操のない奴。
誇りのない奴。道義心のない奴。道徳のない奴。
こんな奴は、最初から仲間ではない。
仲間のために働かない社員を俺は守る義務はない。
金のために働いているというなら、金の切れ目が縁の切れ目でいい。
会社が潰れそうだ、大変だと気が付いた時、窮地に追い込まれた時、逃げ出す様な者は、さっさと辞めていけばいい。そんな不人情な奴、辞めてもらって結構。
去る者は追わず。敵前逃亡する輩と俺は手を組まない。
苦しい時、困難な時こそ、仲間が必要なんだ。仲間としての真価が問われる。
仲間以外の社員はどんどんやめてもらっていい。
その代わり、仲間の面倒はとことん見る。死ぬまで見る。それが俺の志だ。
だから、ただいるだけで給料が上がっていくような年功序列型の組織も給与体系も俺にとって有害でしかない。
仲間が仲間でなくなるから。
その時その時、仲間にとって何が必要なのか。
物事の本質を見失ってはいけない。
仲間に求められているのは、自分が仲間にどれだけ貢献しているかだ。
仲間からの評価、そしても生きていくために必要な物それだけだ。
皆から自分が何を求められていて、仲間に対して俺はどれだけの事が出来たか。
苦楽を分かち合う事。それしかない。
人は歳をとる。
若い時と同じ仕事はできない。若い時と同じように事を求められても足手まといになるだけだ。
そうなったら、自分の居場所だってなくなる。それは悲劇だ。
自分は、年相応に、自分が働いただけの分け前を得られればいい。
いくつになっても仲間の役に立てればそれでいい。足手まといや負担になるのは厭だ。
何よりも、これからの若者たちの役に立てれば最高なんだ。
だから、俺は、年功序列型の組織も給与体系も止めた。捨てる。
そう覚悟したんだ。それは仲間のため。共に戦い、歳をとった仲間の為でもある。
働きもなく、必要もなくも余分な給料をもらう気はないし、それは仲間に負担ばかり増やす事になる。必要なのは金の多寡ではない。仲間が自分の事をどう思っているか。認めているかだ。
俺は、最後、無一文になったっていい。
心の許し合える仲間がいてくれさえすれば、それだけで俺は幸せなんだ。
親父は、最後、俺にこういい残して逝った。
人間の幸不幸は、晩年で決まると…。
いくら豪邸に住んだって、どんなにたくさんの財産を残したところで、苦楽を共にした仲間が傍にいない。心を許せる仲間がいないなんて、なんて心貧しい。
俺に何が残せる。
墓の中には、地位も、名誉も、財産も持ってはいけない。
この世のものは、神からの預かり物。
人生の最後には、素裸になって、神に前にひとり立つ。
その時、借りた物は、全て、神にお返しする。
後、残されるのは、自分の魂、思いだけだ。
自分がどれくらい自分の人生に納得できるかしかない。
自分がやってきた事に、どれだけ責任が持てるかだと思う。
悔いを残すような生き方をしない。それだけだ。
俺たちは、今、嵐を前にしている。
この嵐を共に乗り切る覚悟がある者だけ残ればいい。
俺はそう覚悟している。
共に行こう。
共に戦おう。