あいつは、俺の目を覗き込むようにして見据えると。
「この世の中には、飼いならされるか、飼いならすかの、いずれしかない。
自由な人間か。奴隷になるか。」
そこまで言うと、あいつは、立ち上がると。
イライラした様子で、俺の周りを歩き出した。
「みんな、飼いならされてしまった。
飼いならされやがって。畜生。
いずれは、あいつらの、食卓の上に供されると言うのによ。
ブクブクと肥えやがって。
一人前の口をききやがる。
あいつらの自由なんて、家畜の自由にすぎないというのによ。
何もわかっちゃいやしない。
誇りというものがないんだ。プライドはさ。どこにいたんだ。」
そこまで言うと、俺の目をまじまじと見て。
つぶやくように、
「なあ、いい加減にしようや。
目を覚ませよ」と低く呻くように言い放った。
ぐっと目を見据えると。
あいつは、「お前、自由ってわかってんのかよ。」と吐き捨てるように言った。
「自由と言うのはさ。自分で決められる事さ。
従うか従わないかの問題じゃあないんだ。
自分の意志が問題なのさ。
なんだってかんだって逆らっていればいいと言うんじゃあないさ。」
バンバンとテーブルを叩くと、やつは、
「まだわからないのか、まだ目が覚めないのか。」と喚いた。
「自分で何も決められなければ、自分の事さえ決められなければさ。
自由なんかになれない。
決める時はさ。
決めろよ。
そして行動するんだ。
男は、黙ってというじゃないか。」
そう言うとあいつは、テーブルを乗り越えてきてさ。
俺の目にどっかりと腰を下ろし。
「やる時には、やるんだよ。
何もせずに、白旗掲げるなんてできないよ。
やるしかないじゃないか。
最初からさ、負け犬になんてさ。なれないもの。
自由になるんだ。自由に。
決めるんだ。
やってみなければわからにじゃないか。」