元亨利貞
易に太極あり、これ両儀を生じ、両儀は四象を生じ、四象は八卦を生ず。八卦は吉凶を定め、吉凶は大業を生ず。
一陰一陽之を道と謂(い)う。之を継ぐ者は善也。之を成す者は性也。仁者は之を見て之を仁と謂う。知者は之を見て之を知と謂う。
百(ひやく)姓(せい)は日に用いて知らず。故に君子の道は鮮(すくな)し。
易は、人類の英知の結晶であり、至宝である。
無極にして太極(混沌たる根元)。
太極が動いて陽(分化発動する働き)を生ず。
動が極まって静なり。
静にして陰(統一含蓄する働き)を生ず。
静が極まってまた動。
一動一静、互いに其の根と為って、分かれて陰、分かれて陽、両儀立つ。
陽が変じて陰が合して、水火木金土を生ず。
五気(水火木金土)が順に動いて四時(四季)が行われる。
これを五行と言うけれども、要するに一陰陽である。
陰陽は一太極であり、太極はもと無極である。
五行が生まれるというけれど、各々其の性質は常に必ず一になる。
これが無極というものの本質(真)。
易は科学であり、確率統計である。
また、二進法であり、今日のコンピューター言語にも通じる。
機械学習にも通じる。
善く易を為(おさ)むる者は占わず
データを分析したり、計画を立てるにしても、何かをやろうとしたら、前提条件が重要になる。
ところが、意外と前提とか立ち位置などが粗雑、乱暴、いい加減に扱われていることが多い。
分析なども、前提を無視、あるいは決めつけてデータや、情報だけを対象に分析しているとどうしても回答が画一的で、同じことをただ言い換えているだけになりがちである。
誰であろうと、誰に対しても、同じことを繰り返すだけになる。
当然飽きられてしまい、最後には、話し相手にもされなくなる。
相手を見ていない。相手の条件を無視しているからで。前提がない。
画一的で一方的なのである。
大体、相手の言っている事をどう理解したかは、その人にしかわからない。
自分の解答を相手がどう受け止めたかも検証する必要がある。
将(まさ)に叛(そむ)かんとする者は其の辞(ことば)を慙(は)じ、中心疑う者は其の辞(ことば)が枝(わか)れる。吉の人の辞は寡(すくな)く、躁の人の辞は多い。善を誣(し)うる人は其の辞が游(うか)び、其の守りを失う者は其の辞が屈(かが)む。
相談も、打合せも、話し合いも双方向の行為である。
画一的、一方的では、そもそも成り立たない。
人は、他人と同じ答えを求めているわけではない。
むしろ一人ひとり、違う対応する事を求めている。
自分だけ、自分は他の人と違うという意識は、誰にでもある。
何故なら、それが自意識であり、自意識がなければ、自分が保てないからである。
自分は特別なのであって、他の人と同じ扱いをするというのは馬鹿にしている。
そうなったら、人に合わせて、相手に合わせて、応答を変える必要がある。
年寄りの相談と子供の相談は、同じ事でも、受け答えは変えなければならない。
先生と生徒、医者と患者、経営者と社員、親と子、自ずと求めていることが違うのである。
易経の凄さは、相手に合わせた回答が許され、しかも、それが誠実にできると言うことだ。
同じデータに基づいていてもだ。
相手に合わせると言っても根本を変えたら話にならない。
易は、根本を変えずに人それぞれ対応を変えるのである。
陰陽と言っても、陰とは何か、陽とは何かと、辞書的、観念的にとらえる必要はない。
陰、陽を働きや状態だと思えばいいのである。
相反する、反対方向に働く作用。作用反作用の関係にある働き。
つまり、自分や原点から見て、対称的作用。相対的作用で、右と言えば左があり。
前と言えば、後ろがある。
売り手がいれば、買い手がいる。
貸し手がいれた、借り手がいる。
入金があれば出金がある。
債権が生じれば、同額の債務が派生する。
つまり、同じことが視点を変えると二つの行為になる事を陰と陽とする。
そこから、表裏の関係にある働きを反復、繰り返して、分類していく。
ある意味で弁証的にです。
例えば、イン・アウト、イエス・ノー、遠ざかると近づく、売り買い、貸し借り、内・外、前進と後退、攻めと守り、渡すと受ける、押すと引く、静と動、勝と負。
静と動は、動いている点を止めると静止して点が動き出すという関係。
このように作用反作用の関係にある働きに二律背反にある作用と状態を加味していく。
例えば、上げ・下げ、強・弱、裏・表、発散と収束、吐くと吸う、増と減、明と暗、名と実、濃と淡。
上げと下げが連動している時は、それも、計算する。
天の道を立てて陰陽と言い、地の道を立てて柔と剛と言い、人の道を立てて仁義と言う。
又、始めをたずねて終わりに返ることによって死生を知ると言う。
陰、陽の働きが決まったら。
その働きで階層を組み立ていく。
易は六階層。
例えば、簿記で言えば、人を原点として、物(総資産)を陽(出)として、「お金」(総資本)を陰(入)とする。これが第一層。
第二層は。「費用」「資産」「収益」「負債・資本」
第三層は、「変動費」「固定費」「流動資産」「固定資産」「仕入れ」「粗利益」「流動負債」「固定負債・資本」というように「入」と「出」で組み立ていく。
これに、キャッシュフローを組み合わせてもいい。また、何らかの指標を組みこむ。
いろいろな組み合わせを試してみると。「イエス・ノー」なども、陰陽は象徴的に使えますから。対称性があるものは表裏となる例えば、「収益」と「費用」、「資産」と「負債」、「資産」と「収益」、「負債」と「費用」といった象を比較対照したりすることもできる。
また、損益分岐点分析に活用する事も。
指標による分析の限界を補えます。また、個々の卦を段階別に分析する、例えば、創成期、思春期、成長期、成熟期、老衰期、再生期ごとに対応する。
論理は、全体と部分(要素)からなる。
全体を構成する要素は、他の要素と何らかの関係で結びついている。
全体を構成する要素には、位置と働きがある。
論理には、構造がある。
易の基礎になるのが六十四卦である。
六十四卦の別の呼び名が、本卦。
本卦は、現在の状態や自分自身について、もっとも顕著に表す部分とされる。
初めのころ陰陽の二つだけしかなかった。
それが発展して八卦が生まれ、さらに細分化されて誕生したのが六十四卦です。
六十四卦は、八卦と八卦をかけ合わせること
六十四卦は八卦の2倍にあたる六つの爻で構成されています。
八卦は象を以て告げ、爻(こう)彖(たん)は情を以て言う。剛柔雜わり居(お)りて、吉凶を見る可し。変動は利を以て言い、吉凶は情を以て遷(うつ)る。是の故に、愛(あい)悪(お)相い攻めて、吉凶生じ、遠近相い取りて、悔吝生じ、情偽相い感じて、利害生ず。凡そ易の情、近くして而して相い得ざれば、則ち凶、或いは之を害し、悔い且つ吝なり。
爻とは、易の卦を表現する際に使用される棒記号のことを指します。
まっすぐな横棒─と、真ん中に切れ目のある横棒- -の二種類で表現されます。
爻は陽と陰に分かれ、─が陽、- -が陰を意味し、それぞれ陽爻、陰爻と呼ばれます。
さらに、奇数は陽、偶数は陰とされており、陽爻を数字の九、陰爻を数字の六で表します。
この爻が三つ組み合わさるとと八卦となり、さらに八卦が二つ組み合わさり六つの爻となったものが六十四卦となります。
爻辞こうじという爻についての解釈の言葉が示されてもいます。
八卦は象を以て告げ、爻(こう)彖(たん)は情を以て言う。剛柔雜わり居(お)りて、吉凶を見る可し。変動は利を以て言い、吉凶は情を以て遷(うつ)る。是の故に、愛(あい)悪(お)相い攻めて、吉凶生じ、遠近相い取りて、悔吝生じ、情偽相い感じて、利害生ず。凡そ易の情、近くして而して相い得ざれば、則ち凶、或いは之を害し、悔い且つ吝なり。
八卦は、易の基本中の基本となる、八種類の要素のことを指している。
この八種類の要素(天・沢・火・雷・風・水・山・地)によって成り立っていると古代中国では考えられていた。
天地位を定め、山澤気を通じ、雷風相薄り、水火相射わず、八卦相錯わる。
往を数うる者は順にして、来を知る者は逆。
是の故に易は逆数なり。
神なる者は、万物に妙にして為すものなり。万物を動かす者は、雷より疾きは莫し。万物を橈ます者は、風より疾きは莫し。万物を燥かす者は、火より熯かすは莫し。万物を説ばす者は、澤より説ばすは莫し。万物を潤す者は、水より潤すは莫し。万物を終え万物を始むる者は、艮より盛んなるは莫し。故に水火相逮び、雷風相悖らず、山澤気を通じ、然る後能く変化し、既く万物を成すなり。
八卦は、それぞれ三つの爻こうから成り立っています。
それぞれの八卦が持つ意味合いを自然現象になぞらえたものが、正象。
八卦一つひとつが持つ、基本的な性質や特徴などを表したものが、卦徳。
乾は健なり。坤は順なり。震は動なり。巽は入なり。坎は陥なり。離は麗なり。艮は止なり。兌は説なり。
乾を首と為し、坤を腹と為し、震を足と為し、巽を股と為し、坎を耳と為し、離を目と為し、艮を手と為し、兌を口と為す。
その八卦を上下二つ組み合わせて、六十四卦が構成されています。
六十四卦は八卦の二倍にあたる六つの爻で構成されています。
昔者、聖人の易を作るや、将に以て性命の理に順わんとす。
是を以て天の道を立てて陰と陽と曰い、地の道を立てて柔と剛と曰い、人の道を立てて仁と義と曰い、三才を兼ねて之を両にす。
故に易は六画にして卦を成す。
陰を分かち陽を分かち、迭いに柔剛を用う。
故に易は六位にして章を成す。
六十四卦の一つひとつに名づけられている呼び名のことを、卦名かめいと言う。
六十四卦の一つひとつを説明した解釈の言葉を、卦辞かじと言う。
卦の構成
一番下の爻が初爻。
初爻があらわすのは、弟妹。平社員。村。足。季節は1月~2月。
下から二番目の爻が二爻。
二爻があらわすのは、自分自身を表している部分です。
会社の中では係長。町。脚部。季節は3月~4月。
下から三番目の爻が三爻。
三爻があらわすのは、兄、姉。課長。市。股や腰。季節は5月~6月。
下から四番目の爻が四爻。
四爻があらわすのは、母。重役。大都会。腹。季節は7月~8月。
下から五番目の爻が五爻。
五爻があらわすのは、父。社長。首都。胸や背中。季節は9月~10月。
一番上の爻が上爻。
上爻があらわすのは、祖父母。会長。郊外。頭や首。季節は11月~12月。
面白いのは、自分が二爻に置かれている事である。
内卦とは、六十四卦に組み合わされている六本の爻のうちの下三つにあたる、初爻・二爻・三爻のことを指す。また、下の部分にあることから、別名、下卦とも呼ばれる。
外卦とは、六十四卦に組み合わされている六本の爻のうちの上三つにあたる、四爻、五爻、上爻のことを指す。また、上の部分にあることから、別名、上卦とも呼ばれる。
卦の種類には、本卦、之卦、裏卦
六十四卦の別の呼び名が、本卦。
大成卦とは本卦で構成された爻のうち特定の爻の陰陽を入れ替えたものをいう。
変爻は、逆の陰陽に変化する爻を求めます。
求めた爻の陰陽を入れ替えて得られる大成卦を、之卦と言う。今後起こりうる可能性を暗示しています。
ただ、あくまでも予測であり、必ずしもその方向に向かうとは限りません。さらに、裏に隠された事情や秘められた問題点などを詳しく探る場合などにも使用されます。
現れた六十四卦すべての爻の、陰陽を入れ替えたものを裏卦と呼ぶ。
隠れた自分や他人の本心を探りたい場合や、物事や状態の裏の意味を知るための参考になることがあります。
このような易の構造を活用して、分析用のプラットフォームを作る。
占うのではなく、爻には何らかの事象や数値を当てはめていく。
つまり易の構造が重要なのである。
陰陽は、+-でとらえてもいい。
易の構造が重要。
そして+-、INOUT、これらを組み合わせ、さらにオブジェクト指向を取り入れると、相手に合わせた対応をとっても一貫性は失われずに済む。
だいたい、百人いたら百人対応を違えるのが自然なんです。
いじめや、高齢者に対する対応も相手の立場に立った対応が可能となる。
まず、卦として状況や前提条件を明らかにし。
その概要、とるべき方針を卦辞としてあらわし、相手の状況条件に沿って爻辞を解釈する。
この手順が大切で。まず全体、全貌を捉え、それから、相手の置かれている状況を確認して。相手の立ち位置に沿って対策を立てていく。
これが易学的アプローチ。
地天泰(ちてんたい)
彖辞
泰は、小往き大来る。吉にして亨る。
彖伝
泰は小往き大来る、吉にして亨るとは、則ち是天地交わりて万物通ずるなり。上下交わりて其の志同じきなり。内陽にして外陰、内健にして外順、内君子にして外小人。君子の道長じ、小人の道消するなり。
象伝
天地交わるは泰。后以て天地の道を栽成し、天地の宜を輔相し、以て民を左右す。
爻辞
初爻 茅を抜くに茹たり。其の彙を以てす。征けば吉。
二爻 荒を包ぬ。馮河を用う。遐遺せず、朋亡ぶれば中行に尚うことを得。
三爻 平にして陂かざる无く、往きて復らざる无し。艱貞なれば咎无し。恤うる勿れ、其れ孚ならば、食に于て福あり。
四爻 翩翩富まず。其の隣りを以てす。戒めずして以て孚あり。
五爻 帝乙妹を歸がしむ。以て祉あり元吉。
上爻 城隍に復る。師を用うる勿れ。邑より命を告ぐ。貞なれば吝。
小象伝
初爻 茅を抜く征けば吉とは、志外に在るなり。
二爻 荒を包ぬ中行に尚うことを得るは、光大なるを以てなり。
三爻 往きて復らざる无きは、天地際わればなり。
四爻 翩翩富まざるは、皆実を失うなり。戒めずして以て孚あるは、中心願うなり。
五爻 以て祉あり元吉とは、中以て願いを行なうなり。
上爻 城隍に復るは、其の命乱れるなり。
天地否
卦辞
否の人にあらざる、君子の貞(てい)に利あらず。大往き小来(きた)る。
六十四卦における配列(序卦伝)
泰とは通ずるなり。物はもって終に通ずべからず。故にこれを受くるに否(ひ)をもってす。
彖伝
彖に曰く、「之を否ぐは人に匪ず。君子の貞に利ろしからず。大往き小来る」とは、則ち是れ天地交わらずして万物通ぜざるなり。上下交わらずして、天下に邦无き也。内陰にして外陽なり。内柔にして外剛なり。内小人にして外君子なり。小人道長じ、君子道消するなり。
象伝
象に曰く、天地交わらざるは否なり。君子は以て徳を倹しくし難を辟く。栄えしむるに禄を以てすべからず。
爻辞
初六 茅(ちがや)を抜くに茹(じょ)たり、その彙(たぐい)と以(とも)にす。貞(てい)なるときは吉にして亨(とお)る。
六二 包承(ほうしょう)す。小人は吉。大人(たいじん)は否にして亨(とお)る。
六三 包羞(ほうしゅう)す。
九四 命(めい)ありて咎(とが)なし。疇(たぐい)祉(さいわい)に離(つ)く。
九五 否を止(や)む。大人(たいじん)吉なり。それ亡(ほろ)びなんそれ亡びなんといいて、苞桑(ほうそう)に繋(かか)れり。
上九 否(ひ)を傾く。先には否(ふさが)り後には喜ぶ。
小象伝
初六 象に曰く、茅を抜く、貞なるときは吉、志君にあるなり。
六二 象に曰く、大人は否にして亨る、群に乱れざるなり。
六三 象に曰く、羞を包む、位当たらざればなり。
九四 象に曰く、命ありて咎なし、志行わるるなり。
九五 象に曰く、大人の吉なるは、位正に当たればなり。
上九 象に曰く、否終われば傾く、なんぞ長かるべけんや。
経済分析は、
初爻企業
二爻家計
三爻財務
四爻金融
五爻為替
上爻国際収支
裏卦は、資本収支となる。
あるいは
初爻企業
二爻家計
三爻財務
四爻金融
五爻GDP
上爻国際収支
陰陽は、対前年、あるいは、過不足などを使う。
経営分析は、
初爻利益
二爻費用
三爻売上
四爻資産
五爻負債
上爻資本
陰陽は、対前年を使う。
並べ順や組み合わせを変えると多様な分析ができると思う。
爻を使う事で視覚的に訴えられ、五段階に色分けせればより立体的になる。
利益は、利益は、青の濃淡で、損失は赤の濃淡。マッピングの手法で。
費用は、前年との差。そうでないとプラスマイナスが判定できない。
濃淡をつける事で程度が視覚化できる。資金の増減で考えてもいい。
また、八卦で、上下に分けると違った見方ができる。
例えば、資本、資産、負債の象と利益、費用、収益の象で分けて見立てたり、上下を入れ替える。
陰陽を、部分的に入れ替え変爻を見てみる。それは将来予測にもつながる。例えば、減益を増益に置き換えてみる。
最終的にユーザーインタフェースをダッシュボードにするとコックピット化できる。
例えば、決算書を卦としてあらわす場合。
七行二列の表を作り。
一行目を項目項目行とし、一列目を借方(陽・運用・出)とし、二列目を貸方(陰・調達・入)とする。
二行目、借方、総資産の増減、貸方、資本の増減
三行目、借方、固定資産の増減、貸方、固定負債の増減。
四行目、借方、流動資産の増減、貸方、流動負債の増減。
五行目、借方、費用の増減、貸方、収益の増減。
六行目、借方、固定費(仕入れ)の増減、貸方、粗利益の増減。
七行目、借方、変動費の増減、貸方、営業利益の増減。
そして、個々の項目を前期との増減で増を青の濃淡、減を赤濃淡で見る。
そして、貸方、借方、各々の卦を読む。
また比較し、変爻、裏卦などを読み、先を予測する。
象で見るというのが結構有効なんですね。数値だけだとかえって感覚的になる。
卦辞、爻辞も、含蓄があり深遠。
物は窮まるべからざるなり。故にこれを受くるに未済(びせい)をもってしてここに終る。