なぜ、幹部会議で資金繰りを検討しなければならないのか。
会社は、お金の動きで成り立っている。
利益が出なくても、お金が、回っていれば経営は継続できる。
逆に、どんなに高利益を上げてもお金が回らなくなったら会社は潰れる。

なぜ借金が怖いのか。それは、借金の返済は待ったなしであり、不渡り手形を出すと会社は銀行取引が停止され事実上潰れる。
しかも、借金の返済は、損益上にはあらわれない。
真の危機は。水面下で静かに進行する。
逆に言うと借金がなければ会社は潰れないともいえる。
ただ、利益が上がらないと、成り立たなくはなるだけ。
それはそれで怖い。

多くの商売人は、借金の怖さを身にしみて感じている。
また、借金のありがたさも。

お金を調達し、投資し、回収し、再投資するこの循環によって会社は成り立っている。
利益は指針に過ぎない。
問題は、いかにお金を調達するかだ。

お金は、使わなければ効力を発揮しない。
使えば、お金は無くなる。
たくわえがなければお金の効力は続かない。
だから、常にお金を調達し続けなければならない。

資金繰りというと借金の事だと思い込んでいる幹部が結構いる。
だから、何で、資金の話を幹部会でするのですかという人がいる。
お金の調達手段イコール、借金だと思い込んで、資金繰り、イコール、借金の話だと錯覚しているからである。
資金の調達手段は借金ばかりでじゃないし、できれば借金はなるべくしたくない。
かつての幹部は、借金の怖さをよく知っているから、この感情を共有していた。
資金の調達手段を借金だと思い込み、資金繰りを借金をする事だと思うと幹部会で資金の話をする意味が分からなくなる。
資金の調達手段の一番は売上収入である。売り上げではなく売上収入。
次に仕入れと経費の削減。デット・ストックの現金化、資産の現金化。
増資などの資本取引。取引条件の変更などである。
注意してほしいのは、売上ではなく売上金の回収である。

借入というのは、財務ができる資金調達の手段で、財務の責任者が話せるのが借金の話だというだけで、資金繰りの現場はむしろ営業や総務、業務、支店などにある。
資金繰りで財務ができる事は限られているし、財務ばかりに資金繰りを任せていたらたちまち、借金漬けな体質になる。

だから、幹部会議で検討するのは、いかに現金収入を増やすか、仕入れ条件を改善するか、売上金の回収や、デット・ストックの経理、遊休資産を減らすか、経費を削減するか、それを資金需給に基づいて検討してきたし、幹部会の一番の議題だった。
そして、冗談抜きに資金繰りは経営に直結していて、確実に実行されないと、お金が回らなくなり頓死してしまう。

つまり、幹部会の資金繰りの話は。財務以外が主役、財務ができない事で確実にやらなければならない事、報告されない事が中心なので、借入金の計画はむしろ副次的なのである。
経費節減でいくら資金が浮くか、在庫を売ってどれくらい入金が見込めるか、いずれも真剣勝負である。

この点を勘違いすると、幹部会の役割や意義、働きが理解できない。
幹部会は末端を動かす中枢であり、手足を脳が動かせなくなれば、半身不随状態になる。

極端な話、昔の経営者の中には、手持ち現金残高と預金残高、後は請求書だけ見て、資金不足が予測できたら、どこからか、現金を工面すればいいと。
簿記もわからないし、帳面もつけない。
町の商店主、個人事業者なんてそんな経営者がほとんどで、それで、税金も納めない。
それでも成り立った。
昔の魚屋、八百屋なんて、店に笊をつっておいて、売上をその笊に入れて、店が閉まったらそれを勘定し、明日の仕入れ分だけ残して、残りを生活費に回す。
それが儲け。その日暮らしなのである。
だから、税務署は苦労して、青色申告などを考案した。
とりあえあず帳簿つけなければ、利益の追求など仕様がない。
昔は儲けであって利益とは言わなかった。
だから、昔の商売人は儲けに目敏い。

なぜ、こんなことを知っているかというと、ガソリンスタンドや映画館などの現金商売、日銭商売は帳簿などなど一々つけなくてもやっていけた時代があった。
今でも、中古車販売などには、やっている処があると聞いている。

家計を考えればいい。
誰も、我が家の利益はなどと考える人はいない。
あといくら、お金があるかが問題なので。
どれくらい、預金が残っているか。
手取りでいくらもらえるかが気になるので。
金が不足すると言っても、簡単に大金を借金しようと思はない。
つなぎでサラ金と思っても、安易に考えるとすぐにサラ金地獄に陥る。
返せるあてもないのに借金をするのは馬鹿だと。
一攫千金を狙って、借金してばくちをするのは、なお、馬鹿だ。

事業も同じなので、昔の経営者の多くは個人事業者上がりなので。