どうして。
なぜなんだ。
なぜ、俺だけが。
そんな事を言ってもね。
何を、自分が守らなければならないのかが、わからなくなっているんだよ。
自分がさ。見えなくなっている。
気をつけた方がいいよ。
迷うのはいいけどさ。
大切な物をなくさないようにね。
なぜなんだ。
どうしてなんだ。
どうしたらいいんだ。
そんな気持ちに落ち込む事あるけどね。
でも、まあ、いいじゃない。
毒にも、薬にもならない事に囚われてさ。
一番大切な事を見落としがちになる。
どうする。
どうする。
どうしたらいいんだ。
焦る事はないよ。
脚下照顧。
足下をね。足下をみる事だよ。
いつまでたっても、守るべきものを知らず、守られる側の人間でいると人は弱くなる。
いざという時に踏み止まれず、逃げだしてしまう。
自分が何を守るのか。
守るべき物を知っている人間は逃げたりしない。
何故なら、逃げられないからだ。
歳をとるとね。
段々、ずるをする事を覚えてね。
人間が狡すっからくなってくる。
よくないよね。
若い頃にはさ。
楽する事、ずるい事、誤魔化す事、嘘つく事を覚えるなってよくしかられたけどね。
楽する事、ずるい事、誤魔化す事、嘘つく事を覚えたら、人間が悪くなる。
他人は誤魔化せても、自分は、誤魔化せない。
後ろめたさが、心に積もって、段々と魂が薄汚れてくる。
だからさ。歳をとるのは厭だっていうの。
歳をとった時の方がね。潔くならないと。
未練が、一番駄目だと、若い頃から、自分に言い聞かせてきてさ。
でも、未練がましくなるんだよね。
親父たちは、戦争から帰ってきて。
家族を守る事、会社を守る事、国を守る事に必死だった。
真剣に、真面目に取り組んでたよ。
だからね。
なぜだとか。俺だけが何てね。
考える暇もなかった気がする。
でも、いつの間にかさ。
守られている事を忘れてね。
守られている事すら気が付かなくなり。
守られる事が当たり前で、当然だと思い込むようになってしまった。
ふと気が付くと、なぜ、俺だけがこんな目にあうなんてね。
なに甘ったれてるんだと言うかもしれないけど。
当人は言ったって深刻で。
家に引きこもったり、まともに世間と付き合えなくなったり。
しまいには、自殺したり。
弱ったよね。困った。
それってさ。
自分が、いつまでも守られる側にいたいからなんで。
自分が、何を守らなければならないのかを、知ろうともしなくなった。
結局、飼いならされたんだよね。
飼いならされた証。
誰もさ。
誰も、助けてくれないよ。
自分で、自分を守ろうともしない奴をよ。
だって、自分の始末もできないものを、どうやって助けられるというの。
考えてごらんよ。
なぜ、守ってくれないんだと言う前にさ。
何を、守らなければならないかを、考えてごらん。
そうしないと、いつまでたっても子供だよ。
守ろうとしている者たちの側に、立てないよ。
守ってくれないって。
それは、家畜だよ。
ペットの考え方だよ。
自分達の家族、自分の会社、自分の国は、自分で守ろうよ。
もう一度ね。
自分が、何を守らなければならないのかをさ。
改めて考えてごらん。
なぜなんだ。
どうして、俺だけがと落ち込む前にね。